2010-01-01から1年間の記事一覧

第10話 科学者として / I am a scientist

「日本のドクター、農機具が壊れてしまってね。30,000CFA(6千円)ほどで直るのだがね。」 「この間も、耕作用の農機具を直すと言って、同額を支払ったはずですよ」 正直、「またか」と思った。このPathiriと言う村は金に対して、少々ずる賢い。ただでさえ、新…

第9話 日本人なのにケチな奴 / Speak like a child

「ねぇ、日本人だろう?ちょっと頼むよ」 「・・・働け」 日本では禁止用語だろうが、ここブルキナでも乞食がいる。ストリートチルドレンもちらほらと見かける。彼らは(時に彼女らは)、日本人の私を見かけるとほぼ必ず声をかけてくる。首や肩から紐を下げ…

第8話  飯喰ったか? 2 / I'm hungry spider 2.

「先輩は虫が嫌いでしたよね?それでよくアフリカに行きますね」 後輩の倉沢は口の悪い女だ。と思った。尤も、口が悪いと言っても話し方が下品な訳ではない。ただ皮肉を言うタイミングが絶妙すぎて、そんな印象を与える。彼女のせいではないのだ。そうなった…

第7話 飯喰ったか?1 / I'm hungry spider1.

快適に眠れるはずだった。初めての海外赴任、到着からいきなりのホテル暮らしと地方への出張、道無き道を突き進む映画のような顛末。やっと改修が終わった我が家は家具一つなく土ぼこりに汚されていた。それでも、ホームがあるというのは違う。生活に安定感…

第6話  清廉潔白な人々と魔法の言葉 / The Burkina-be

「もう受付時間は終了しているんだ、明日にしろ」 私のパスポートのコピーを持った警察官は、ぞんざいにそう言うと、コピーをこちらに押しやって、「帰れ」と手を振った。しかし次の瞬間、手を返して、続けた。 「1000CFAで処理してやっても良いぞ」 未だに…

第5話 映画のような / A bumpy road

「前が見えないな・・・」 土煙を上げて疾走するイサカの車を、我々を乗せてバルガの車が追いかける。雨期の訪れを迎えたはずのブルキナなのに、道路は乾ききっている。ちょっと車が通るだけで、大量の砂埃が舞い上がり、ほんの1m先も見えない。 「少し距離…

第4話 初めての海外赴任3 / A researcher stationed abroad 3

「着任早々ですから、特別にエアコン付きの部屋を取りました」 空港から10分もかからずに、最初の宿 Hotel Pavillon Vert に到着して、里村さんが言った。フランス語では通常 H は発音しないから、オテル パビロンバート となる。もっとも最後もほとんど発音…

第3話  初めての海外赴任2 / A researcher stationed abroad 2

「Dr…. Dr. Satomura?」 やっとの思いで2つの預け入れ荷物のうちの1つを見つけ出したとき、背後から声がかかった。見知らぬアフリカ人だが、かなり流暢な英語を話している。日本人というより、東洋人自体がそのとき周りに私一人だった。アフリカでの生活と仕…

第2話 初めての海外赴任1 A researcher stationed abroad 1

「これではだめだ、お前は中国人か?フランス語が書けないのか?」 油断していた。成田空港を飛び立ち、ロワシー(シャルル・ド・ゴール空港)までは新婚旅行でも経験していて余裕を持っていた。海外に出るのはイタリア・ギリシャ・フランスに続いて4度目だ…

第1話 ブルキナファソの書斎から Work in one's study at Burkina Faso

ブルキナファソ(Burkina Faso)、アフリカ大陸の中央よりもやや北側、周りを北にマリ共和国・南にガーナ・東から南西に掛けてニジェール・ベナン・トーゴ、そしてコートジボワールに囲まれた小国である。面積は日本の70%に過ぎず、公用語はフランス語と言っ…

まえがき/Foreword

ブルキナファソへの赴任決定から早10ヶ月。 それまでは聞いたことも無かったブルキナファソという国に単身で赴任して来た生命科学の研究者です。 慣れない生活・文化・分野違いの仕事に追われながら日々を過ごしています。 如何に慣れない生活とはいえ、5ヶ…