2012-01-01から1年間の記事一覧

第32話 ごめんなさいとブルキナベ / Oh, sorry.

「僕はもうすでに20カ国は旅して来ましたよ」 「へえ、それはすごいね。」 「いろんな国の色んな文化を肌で感じたいんですよ。」 年が明けて2011年(1人での年越しの侘しさは書きたくない)。 私は1人の日本人大学生と出会った。彼は海外旅行が趣味で、旅…

第31話 巷に雨の降るごとく我が心に涙降る / Il pleure dans mon coeur Comme il pleut sur la ville

「そのお皿、片付けてあげるよ?ムシュー」 「ん?そうか、ありがとう」 出張の途中、道ばたのマキ(簡易食堂みたいなもの)で食事をとっていた。メニューはリ・ソース、トマト味。こちらで一般的なトマトソースのぶっかけ飯だ。まあ、美味い所もあるが、大…

第30話 会議は踊る / Der Kongress tanzt

「ドクター?」 「ん?トイレだ。すぐ戻る。」 半分は嘘だ。トイレと称してタバコを吹かしに行くのだ。会議室は侃侃諤諤の様相を呈している。乾期の仕事のうちでも比較的重要なものがある。農閑期でもあるこのシーズンに普段は農作業やその他の仕事で忙しい人…

第29話 青い稲妻が私を攻める / parched earth

「グ、グハッ!」 「ドクター!?」 「大変だ、ドクターが血を・・・・」 騒然となるオフィスとスタッフ達。流し台には私が吐き出した赤茶色の液体が流れている。流しの前のガラス戸には勢い余ったしぶきが赤い点々になり付いている。突然気道に入り込んだこ…

第28話 こぼれ話 / But I digress

11月から12月にかけて、ブルキナファソは乾期の訪れと共に圃場での仕事が一段落する。もちろん、国立研究所内にはirrigation (灌漑施設)もあるから、乾期の作物栽培や実験が続けられている。しかし私にはその予定が無いから、専ら雨期のデータを取りまとめ…

第27話 熱砂視線 / Do you have an eye problem? Why are you grilling me?

「・・・・・・」 ヒソヒソ。ヒソヒソ。時に噛み殺した笑い声。 「・・・・・・・」 ヒソヒソ、ヒソヒソ。 ウンザリだ。やっと長い旅を終えて、ブルキナファソはサリア村に戻ってきた。旅の疲れはあるものの、たまった仕事を片付けねばならない。私の住居が…

第26話 故郷は遠きにありて思うもの/Much spends the traveller more than the abider.

「ヘイ、ジャポネ!こっちが安いよ!!」 「待て待て、うちの方が親切で安全だぞ!」 「ミスター、両替はいかが?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」 ナイジェリアの出張が終わった後の某日、時刻は午前2時30分、私はセネガルのダカールにいた。パリ−ダ…

第25話 カゴのトリ / Caged bird

「Good morning Sir!!」 「ああ、おはよう。」 「Sir! Good day」 「やあ、いい天気だね」 博士の学位を取ってから初めて、「sir」の敬称で呼ばれた。ちょっと嬉しいけど、照れ臭い様な気もする。古い映画ファンならば、鬼教官のGunnery sergeant Hartmanを…